研究室配属をご検討中の方へ
新年度のご挨拶
弊研究室のホームページをご覧いただきありがとうございます!
私は今年度、3回生春学期の「半導体の性質」をはじめ、いくつかの講義や学生実験の一部を担当させていただいております。学生の皆様にお会いできることを楽しみにしております!さて、このホームページでは講義よりも研究室活動を中心に、どんなことを考えて過ごしているか、そしてこれからどんな研究室を創っていきたいか(誰に聞かれたわけでもないのに長々と)語っていきます!研究室選びや、コース選択等、皆さんの意思決定の一助となることを願って止みません。
令和7年4月吉日
電子スピン物性工学研究室
山下尚人
電子スピン物性工学研究室へのご案内
弊研究室では、半導体と磁性体を融合することにより、新しいスピントロニクスデバイスの創生を目指して研究しています。スピントロニクスはハードディスクドライブ(HDD)や磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)といった製品に応用されている、工学的に重要な技術分野です。また、学術的には物性物理学の最先端分野の一つに位置付けられ、世界中で新発見が相次ぐ活発な研究分野でもあります。弊研究室では、新たな物理現象を探求し、これらを組み合わせて新機能を創発することにより、九州大学発の人の役に立つデバイスを発信することを目指しています。
筆者はこれまで、スピントロニクスの中でも特にバンドギャップのある材料に着目し、電子スピンと電場や光との強い相互作用を活用したアヴァンギャルドなデバイス研究を展開してきました。これにより、世界初・世界最大といった成果を複数挙げており、Physical Review系やNature系の雑誌に論文発表してきました。これにより、新聞やインターネットニュースに取り上げられたり、学会より賞をいただいたりと、一定の反響を得ています。
このページをご覧になっているのは九州大学工学部電気情報工学科に所属している方が多いと思われますが、研究室配属後、皆さんに期待されることは一変します。入学試験や定期試験では、教科書や講義で教わったことをそのまま受け入れ、”出題者の意図に沿った回答"が期待されてきました。一方、研究においてはそのような決まった回答は無く、まだ誰も答えを知らない物理の解明または工学的課題に取り組み、オリジナルの成果で他の専門家を納得させることが期待されます。最先端研究へのキャッチアップのため、ある程度の学習能力は必要ですが、それは良い研究のための十分条件ではありません。知力・気力・体力・コミュニケーション能力等の総合力が重要であり、個性にあった戦略があると筆者は信じています。
研究は人がすべてです。研究は、先人の知恵を取り込むことに始まり、研究者の創意工夫により獲得した新たな知識を後世の人へと伝達する社会的な営みで、人に始まり人に終わるためです。知性と精神を高い次元で統合した人間のことをトータルパーソンと呼びます。弊研究室では不易流行の研究を発信するトータルパーソン集団を共に作っていただける方を募集します。
運営指針
弊研究室の学生諸君には、卒業後どのような分野に進んだとしても活躍できるよう、貴重な研究室生活を活用して成長してほしいと願っています。したがって、次の3つの指針で研究室運営します。
1. 最先端の物性物理学を追求し、人の役に立つデバイスをゼロから創出
筆者は、大学での基礎研究から企業の製造現場におけるものづくりまで一貫した研究開発経験を有し、応用を見据えた基礎研究に取り組んでいます。工学研究者として人の役に立つものづくりを目指し、最新の物理を駆使して新機能創発に取り組んでいます。すなわち、九州大学発の新しいデバイスを生み出し、次の時代の産業の種を生み出すという志をもち、研究を進めています。
こちらに述べた通り、現在は半導体スピントロニクスの研究に注力しています。スピントロニクスは巨大磁気抵抗効果の発見以降、主に金属中のスピン輸送物性を念頭に置いた研究が進められてきました。一方で、半導体や磁性絶縁体には、強磁性金属とは異なった興味深い物理現象が見られます。大雑把な表現となりますが、バンドギャップによりスピンが電界や光と強く相互作用できるためです。近年の成膜技術の発展を背景に、これらの物理が解明されつつあります。そこで、弊研究室では半導体スピントロニクスデバイスにおいて実験と計算の双方から、30年後の社会実装を狙った、やや前衛的なデバイス研究を展開します。
2. 研究教育を通じて「知・伝・論」の実践的能力を向上
この3つのチカラは、社会が技術者に期待する共通要素であると考えています。研究室生活を通じて能力身長できる環境を用意します。
知: 固体電子物性における高い専門性
大学や大学院の講義では、入門的な知識を体系的に学びますが、研究を推進するためにはより専門的な知識が必要です。特に弊研究室では、"高い"専門性を養うため、一歩進んだ固体電子物性の習得を目指します。具体的には、量子力学、特殊相対論等の現代物理学のテーマからメンバーの関心に沿った題材を選び、随時勉強会を行います。
卒業に必要な単位を取得できる見通しがあれば学部等での成績はあまり重視しません。出身大学や学部時代の成績を問わず、物理またはモノづくりに関心があり、自分のアタマで考えることが好きな方の期待に応えたいと考えています。これより、弊研究室は九州大学の卒業生だけでなく、他大学や工業高等専門学校を卒業して弊学へ進学予定の大学院生も大いに歓迎します。
伝: 英語力を含むコミュニケーション能力
研究室で報連相のコミュニケーション能力伸長をサポートします。特に学会発表・論文発表の指導に力を入れています。日本語での文書作成・実験結果のまとめ方の指導は一対一で丁寧に指導します。実験や計算を行った結果は、文章にまとめて残すことを習慣づけます。
現在では、日系企業においても総合職には英語でのコミュニケーションが求められるだけでなく、TOEICの点数が昇進要件に使われるほど、英語力はシビアに要求されます。研究室では、TOEICスコアと実際の英会話力の両方を高める活動を行います。具体的には、TOEIC対策を通じて英語力向上を目指すEnglish Timeを計画しています。さらに、国際共同研究を通じて世界的に活躍できる研究者育成に努めます。
論: 論理的思考力および計画性
研究は、難課題に取り組む世界中の優秀な研究者との競争のため、時には根詰めて考えたり寸暇を惜しんで実験したりすることも必要です。しかし、最短で最高の成果を得るためには、どんな実験をどの順序でやるべきか走りながら考えることも同じくらい重要です。また、人生は仕事や研究だけではありません。学生諸君がきびきびと研究をして早く良い成果を出し、研究に忙殺されることなく充実した学生生活を送ることを願っています。
3. オープンマインドで国際共同研究および産学連携共同研究を推進
弊研究室では、人類の普遍的な価値である学術的好奇心を通じて、学生が国内外の優秀な研究者と交流する機会を提供したいと考えています。皆さんが卒業後にグローバルな競争環境で活躍するための糧となると信じているためです。したがって、大学院修士課程の学生諸君には、主体的に研究に取り組み、成果を得て論文執筆し、国際学会発表することを期待します。
例えば現在、次のグループと国際共同研究を実施中または計画中です。いずれも相互訪問を含む共同研究のため、最先端研究を通じて国際的に活躍できる人材育成を目指します。
University of Leeds (英国)
Chalmers University of Technology (スウェーデン)
Daegu Gyeongbuk Institute of Science and Technology (大韓民国)
New York University (米国)
National Chung Cheng University (台湾)
研究室生活について
コアタイムはありません。ただし、安全衛生管理の観点から、一人で安全に実験できるようになるまでは研究室滞在可能時間を設定し、原則平日午前8時~午後6時までとします。限られた時間で研究を進められるよう規則正しい生活を送ることを期待します。
学生居室は白谷・古閑・鎌滝・奥村研、板垣研、および木山研と同室の予定です。
弊研究室では、共同利用装置を活用したり、学内外の共同研究者と協力したりすることで、装置の維持管理のためのリソースを可能な限り削減しています。これにより、学生が研究の本質に集中できる環境を構築しています。
海外だけでなく、国内の共同研究者とも積極的に連携しています。例えば現在は、京都大学、大阪公立大学、信州大学、北陸先端科学技術大学院大学等と共同研究させていただいています。特に、学内ではシステム情報科学研究院の湯浅研究室、田中研究室、理学研究院の木村研究室と共同で活動する機会が多くあります。
研究室では、週一回の進捗報告(湯浅研究室と合同実施予定)の他、基礎物理の勉強会とEnglish timeを計画しています。ただし、参加者の希望に応じて頻度と内容は検討します。
数学と英語に対する抵抗がないほうがスムーズに研究に着手できると思われます。また、弊研究室で取り扱うテーマはいずれも未解明の自然現象を解明したり応用したりする挑戦ですので、物理に無関心の方にはハードルが高く感じられるかもしれません。
進路について
研究室発足1年目のため卒業生はいません。参考情報として九州大学大学院システム情報科学府のホームページの電子工学専攻をご参照ください。
なお、筆者が学生時代および助教時代に直接指導した学生は、大学院進学または博士号取得後にアカデミア(海外ポスドクまたは国内外の大学教員)にてご活躍されています。
末筆
筆者がサッカー好きのためサッカーを通じて学内の他学部の先生、職員、学生とも広く交流しています。
筆者は教員歴4年目・研究室発足1年目の新参者です。新しく研究室に来てくださった方と共にトータルパーソンの集団となるため、明るく楽しい研究室文化を醸成していきたいです。弊研究室に関心を持っていただいた方はぜひご連絡ください(連絡フォーム)。共に、新しいスピンデバイスを基礎から研究していただける方を心待ちにしております!